診療担当医

飯田 晴康(内科部長)

プロフィール 認定内科医
神経内科専門医
医学博士日本神経学会指導医

診療担当表

神経内科
午前9:00~12:00
午後2:00~ 5:00
午前 午前

午後(検査)

午後

当科の特徴

神経内科では、脳梗塞などの脳血管障害、パーキンソン病や脊髄小脳変性症などの神経変性疾患、脳炎や髄膜炎などの炎症性疾患、ギランバレー症候群などの末梢神経疾患、多発性硬化症など脱髄性疾患の診断、治療を行なっています。

一般には、まだなじみの薄い疾患もあると思われます。気になる症状がある方は、受診してみてください。

一般に神経内科医と聞くと、診療内科や精神科と同じ領域の医者と想像される方も多いかと思いますが、残念ながら「心の病」を診療する科ではありません。神経内科は内科の一分野で、「体を支配する神経」が障害されて起こる疾患を診ます。

※手足が急に動かなくなれば
脳梗塞などの脳血管障害、多発性硬化症などの脱髄性疾患、ギランバレー症候群などの末梢神経疾患
※手足が徐々に動かなくなれば
ALSなどの運動神経疾患、重症筋無力症などの神経筋接合部疾患、多発性筋炎などの筋疾患
※いきなり振えて意識を失えば
てんかんなど
※徐々に振えが強くなるようなら
パーキンソン病や脊髄小脳変性症などの神経変性疾患
※頭痛、発熱が続くようなら
脳炎や髄膜炎などの炎症性疾患

このような疾患の診断、治療を行っています。県内には常勤の神経内科を置く病院は少なく、一般には、
まだなじみの薄い疾患も多いと思われます。気になる症状がある方は、ぜひ一度受診してみて下さい。

 

糖尿病の合併症:多発神経障害

糖尿病の3大合併症は、ご存知ですか。

厚生労働省の発表によると、現在糖尿病の患者数は316万人で、成人男性の15.5%、成人女性の9.8%が糖尿病を強く疑われています。しかし、糖尿病に代表される生活習慣病は、病気が進行しても自覚症状に乏しく、発症当初患者自身は痛くもかゆくもありません。では、なぜ糖尿病を放置してはいけないのでしょう。その理由のひとつが糖尿病による合併症の存在です。

長時間持続する高血糖は、全身の血管の変性、機能障害を引き起こします。これが網膜に起これば3大合併症の一つ糖尿病性網膜症になるわけです。硝子体出血などの原因となり、失明する恐れもあります。現在我が国における失明原因の第一位です。定期的な眼科医の診察が必要で光凝固療法など行う場合があります。

腎臓に細小血管障害が起こると糖尿病性腎症となります。尿中の蛋白排泄が増加し、体がむくみ、末期には血液透析が必要となります。こちらも我が国における透析原因の第一位です。

そして、3つ目の合併症が糖尿病性多発神経障害です。四肢末梢の神経が障害され、痛み痺れを感じたり、反対に痛みを感じなくなったりします。痛み痺れが生じる場合は、患者本人が気づくため、まだ重症化する危険は低いと考えられます。より危険なのは、痛みを感じなくなる場合です。最初に糖尿病は痛くもかゆくもない病気だと説明しましたが、今度はさらに進行し、本来なら痛いはずなのにそれを感じることもできなくなります。知覚鈍麻により熱傷、外傷の治療が遅れ、気づいた時には壊疽・潰瘍から感染をおこし、足を切断する必要が生じることもある恐ろしい病気です。

この神経障害ですが、合併症の割合において神経障害は11.8%と、腎症11.1%、網膜症10.6%をおさえ最多となっています。しかし、他の合併症と比べしっかり認知され、検査治療されているわけではありません。前述の2つの合併症(網膜症と腎症)は、比較的に検査・診断方法が確立されており、早期発見・早期治療が受けられる可能性が高いと言えます。それに対して、糖尿病性多発神経障害は検査診断方法が広く普及しているとは言い難い状況です。アキレス腱反射の低下や下肢振動覚の低下は糖尿病性多発神経障害の指標の一つとなるのですが、医師の熟練度も必要で、医師個人の感覚的判断や患者の訴えをもとに評価されるため、客観的・定量的検査とは言えません。また、腰部脊柱管狭窄症などでも同様の所見を呈し、特異的検査ではありません。異常があっても糖尿病性多発神経障害とは断言できないという意味です。

そこで必要になるのが、当院で行っている末梢神経伝導速度検査です。これは、末梢神経を電気刺激し、それにより生じる複合筋活動電位または感覚神経活動電位を記録し、それらの伝導時間と距離から神経伝導速度を求める検査です。末梢神経そのものを検査するため非常に特異的です。結果もしっかりとした数値で表されるため客観的・定量的評価も可能です。そして、無症候性の神経障害患者の67%で異常が検出でき、感度においても非常に優れています。

この糖尿病性多発神経障害、アルドース還元酵素阻害薬など効果の確立された薬剤も存在しますが、根本的治療というのは何より良好な血糖コントロールを維持することです。そのためには、やはり早期発見が重要になります。積極的に検査を行わなければ、知らず知らずのうちに進行し体(特に下肢)を蝕む糖尿病性多発神経障害です。早期に発見し病気を自覚することでより厳格な血糖コントロールを行えるはずです。

この他にも糖尿病は、冠動脈疾患や脳血管障害の原因にもなります。現在我が国の糖尿病が原因の死亡数は1万3783人ですが、実際には糖尿病が影響し心疾患や脳血管疾患が進展するケースが多いとされています。そして、人口10万に対する糖尿病による死亡率を都道府県別にみると、山梨県は15.1でこれは全国平均の11.0を大きく上回り、47都道府県中43位に位置します。皆さんも手遅れになる前に一度糖尿病性多発神経障害の評価をしっかり行ってみませんか。

 

末梢神経障害関連の私の論文

  1. Haruyasu Iida, Takamura Nagasaka, Kazumasa SHhindo, Zenji Shiozawa: Effect of the free radical scavenger edaravone on peripheral nerve ischemia-reperfusion injury. Muscle & Nerve, 40:582-588, 2009.
  2. Haruyasu Iida, Ann M. Schmeichel, Yanping Wang, James D. Schmelzer, Phillip A. Low: Orchestration of the inflammatory response in ischemia-reperfusion injury. Journal of the Peripheral Nervous System, 12:131-138, 2007.
  3. Haruyasu Iida, Ann M. Schmeichel, Yanping Wang, James D. Schmelzer, Phillip A. Low: Schwann cell is a target in ischemia–reperfusion injury to peripheral nerve. Muscle & Nerve, 30:761-766,2004
  4. Haruyasu Iida, James D. Schmelzer, Ann M. Schmeichel, Yanping Wang, Phillip A. Low: Peripheral nerve ischemia: reperfusion injury and fiber regeneration. Experimental Neurology, 184:997-1002, 2003.